請求書の電子化・ペーパーレス化とは?メリット・デメリットも紹介

請求書の電子化・ペーパーレス化は、ビジネスの効率化とコスト削減を実現するための重要なステップです。近年、テレワークの普及や環境保護への関心の高まりから、多くの企業がこのプロセスを導入しています。

当記事では、請求書の電子化・ペーパーレス化の基本から、メリット、導入時の注意点、具体的な進め方まで詳しく解説します。

請求書を電子化・ペーパーレス化することで、経理業務の効率化、環境負荷の低減、そしてリモートワークの推進が可能になります。企業がどのようにしてこのプロセスをスムーズに進めるか、その具体的な方法についてもご紹介します、ぜひご覧ください。

 

目次

1. 請求書の電子化・ペーパーレス化とは

1-1. 請求書の電子化・ペーパーレス化が注目される理由

2. 請求書の電子化・ペーパーレス化を進めるメリット

2-1. 人件費などのコストを削減できる

2-2. 場所を問わず請求書を発行できる

2-3. 送付履歴を簡単に確認できる

2-4. スピーディーに請求書を受け取れる

2-5. リモートワークを促進できる

3. 請求書の電子化・ペーパーレス化を進めるデメリット

3-1. 専用システムの導入・運用コストが必要になる

3-2. 業務フローの見直しが必要になる

3-3. 紙ベースの請求書を発行しつづける必要がある

3-4. 電子帳簿保存法に対応する必要がある

4. 電子化した請求書の送付方法

4-1. メールで送付する

4-2. チャットツールで送付する

4-3. 請求書発行システムを使って送付する

5. 請求書の電子化・ペーパーレス化を進める方法

5-1. 電子化・ペーパーレス化の目的を明確化する

5-2. ツール・システムを選定する

5-3. 運用ルールを策定する

5-4. 関係者に周知する

5-5. スケジュール・計画を立てて電子化・ペーパーレス化を進める

まとめ

 

1. 請求書の電子化・ペーパーレス化とは

請求書の電子化・ペーパーレス化とは、紙を使用せず、請求書をデータで電子的にやり取りすることを指します。

請求書の電子化・ペーパーレス化の例として、請求書のPDFファイルをメールに添付したり、請求書発行システムを使用して請求書を発行したりするケースが挙げられます。WordやExcelで作成した請求書は容易に改ざんが可能です。WordやExcelなどで作成した請求書は、PDFのように改ざんが難しいファイル形式に変換しましょう。

電子データの請求書は、紙の請求書と同等の法的効力をもちます。紙に出力して別途郵送したり、印刷した紙を原本として保管したりする必要はありません。また、押印の必要がある場合は、電子印鑑を使用するケースが一般的です。多くの請求書発行システムは、電子印鑑にも対応しています。

 

1-1. 請求書の電子化・ペーパーレス化が注目される理由

請求書の電子化・ペーパーレス化が注目される背景には、主に以下の4つが挙げられます。

 

(1)郵便料金の値上げに伴うコスト増加に対応するため

日本郵便は、早ければ2024年の10月頃に郵便料金の値上げを行う方針を固めています。紙の請求書を郵送する場合、郵便料金の値上げに伴ってさらにコストがかかることになるでしょう。請求書を電子化することにより、これらのコストの削減が見込めます。

 

(2)電子帳簿保存法改正に対応するため

2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法では、電子データとして受け取った請求書や領収書などの国税関係書類は、電子データのまま保存することが義務付けられています。この法改正に影響を受け、多くの企業で電子化への対応が進みました。

 

(3)経理部門の業務効率化を図るため

請求書を電子化することで、メールやクラウドを介したやり取りが可能になるため、請求書の印刷や封入・郵送といった手間が削減できます。オフィス以外の場所での発行・受領・確認が可能となるため、テレワークでもスムーズに業務を進められるでしょう。

 

(4)ペーパーレス化により環境負荷の低減を図るため

請求書の電子化により、請求関連業務における紙の使用量を削減できます。経費の節約だけでなく、環境負荷の低減も目指せるでしょう。SDGsの取り組みの一環として実行しやすい施策と言えます。

 

 

2. 請求書の電子化・ペーパーレス化を進めるメリット

請求書の電子化・ペーパーレス化を進めるメリットとして、次のものが挙げられます。

 

【請求書を電子化するメリット】

・人件費などのコストを削減できる

・場所を問わず請求書を発行できる

・送付履歴を簡単に確認できる

・スピーディーに請求書を受け取れる

・リモートワークを促進できる

 

ここでは、上記の5つのメリットについてそれぞれ解説します。

 

2-1. 人件費などのコストを削減できる

請求書を電子データとして発行するメリットとして、請求書の発行業務に関するコストを削減できることが挙げられます。例えば、紙の請求書を発行する場合、下記のようなコストが発生します。

 

【紙の請求書を発行する際に必要となる主なコスト(例)】

・紙代

・印刷代(インク代・トナー代など)

・印刷設備

・郵送にかかるコスト(封筒代・切手代・宛名シール代など)

 

請求書を電子化・ペーパーレス化することにより、上記のような紙の請求書発行に関わるコストを大幅に削減できるでしょう。また、紙の請求書の場合は印刷や封入、発送、控えの保管といった手間がかかりますが、請求書を電子化することでこれらの手間を省力化することが可能です。人件費の削減や業務効率化を図れるでしょう。

 

2-2. 場所を問わず請求書を発行できる

請求書を電子化・ペーパーレス化した場合、場所を問わず請求書を発行できます。

紙の請求書を発行する場合、印刷や封入・発送、控えの保管といった一連の業務を行うために出社が必要となることも珍しくありません。押印のために出社している会計・経理担当者も多いのではないでしょうか。請求書を電子化すれば、出張先や移動中にも請求書に関する業務を行えるため、業務の効率化を図れます。

 

2-3. 送付履歴を簡単に確認できる

請求書を電子化することにより、送付履歴を容易に確認できる点も魅力的です。電子化した請求書は、主にメールやチャットツール、請求書発行システムなどでやり取りされます。これらのツールは送受信した履歴が明確に残る上に、検索しやすいため、「いつ」「どこ・誰に」当該の請求書を送付したかを容易に確認することが可能です。

当該の請求書を素早く検索・確認できれば、取引先から問い合わせがあった際や請求書の誤送や不着といったトラブルが発生した場合にも、迅速かつ適切に対応できます。早期解決を図るとともに、自社の信用向上にもつながるでしょう。

 

2-4. スピーディーに請求書を受け取れる

電子データの請求書の場合、紙の請求書を郵送するよりもスピーディーにやり取りできるというメリットもあります。

紙の請求書を郵送する場合、発行側から受取側に請求書が届くまで、少なくとも2~4日ほどの日数がかかることが一般的です。一方、電子化した請求書はメールやチャットツール、請求書発行システムなどでやり取りをするため、発行当日に受取側へ送信できます。受取側がリアルタイムで確認できるので、業務をスピーディーに行えるでしょう。

万が一請求書の内容に誤りがあった場合でも、電子化した請求書であれば修正対応のやり取りが迅速に行えます。事務処理に関する負担を大幅に軽減できるでしょう。

 

2-5. リモートワークを促進できる

電子化した請求書を社内ネットワークの共有フォルダや請求書作成システムなどで管理すれば、担当社員が出社しなくても請求書業務を行える環境を構築できます。請求書の発行や受取、内容の確認、データの管理などのための出社は不要となるため、リモートワークを促進できるでしょう。

また、電子化した請求書は複数人の経理担当者で確認しやすく、業務を連携しやすいというメリットもあります。出社しなくても情報共有をスムーズに行えるため、経理部門の複数の社員がテレワークを行っても効率的に業務を進められるでしょう。

 

3. 請求書の電子化・ペーパーレス化を進めるデメリット

請求書の電子化・ペーパーレス化を推進することには多くのメリットがある一方で、次のような問題もあることに注意が必要です。

 

【請求書を電子化するデメリット】

・専用システムの導入・運用コストが必要になる

・業務フローの見直しが必要になる

・紙ベースの請求書を発行しつづける必要がある

・電子帳簿保存法に対応する必要がある

 

ここでは、上記の4つのデメリット・注意点についてそれぞれ解説します。

 

3-1. 専用システムの導入・運用コストが必要になる

請求書の電子化・ペーパーレス化にあたり、請求書発行システムなどの専用システムを導入する場合、一定のコストが必要となります。導入する際の初期費用や、継続して運用するための月額費用は利用するシステムによって異なるため、十分に比較・検討することが大切です。

一方で、請求書発行システムなどを導入して請求書を電子化した場合、印刷・郵送費用や人件費を削減できるというメリットもあります。システム導入によって新たに発生するコストと削減できるコストの両方を考慮した上で、システム導入に関する検討を進めましょう。

 

3-2. 業務フローの見直しが必要になる

請求書を電子化・ペーパーレス化することで、業務フローの見直しが必要になることもあります。特に、今まで請求書を手書きで発行していた企業・事業者は、体制を大幅に変更する必要があります。請求書を電子化することで業務効率化やコスト削減などの効果が見込まれるものの、導入時には一定の手間や時間がかかることに注意が必要です。

また、既存の業務フローの見直しや新しいルールの策定などを行う際には、システムの使用方法に関する研修・教育の実施も必須となります。社員がスムーズに運用できるよう、仕組みを十分に整備しましょう。

 

3-3. 紙ベースの請求書を発行しつづける必要がある

請求書を電子化することには多くのメリットがありますが、現時点では請求書の電子化に対応しておらず、郵送やFAXでの授受を希望する企業も少なくありません。取引先が請求書を電子化することに抵抗がある企業・事業者の場合は、紙ベースの請求書を発行し続ける必要があるでしょう。

なお、請求書発行システムの中には、「電子データでの送付」「郵送」「FAX」など送付方法を選択できるものもあります。郵送やFAX送信を代行してくれるシステムもあるため、取引先の状況や要望に合わせて活用しましょう。

 

3-4. 電子帳簿保存法に対応する必要がある

請求書の発行と受取を電子化する場合、電子帳簿保存法などに基づいた対応を適切に行いましょう。

電子帳簿保存法とは、法人税・所得税といった国税関係の帳簿や書類について、電子データで保存することを認めるとともに、保存する際の要件などを定めた法律です。請求書などを電子データでやり取りした場合は、要件を満たした状態の電子データを保存することが義務付けられていることを押さえましょう。

要件を満たさないまま保存した場合、国税調査で指摘されると指導や罰則の対象となる恐れがあります。このような事態を避けるためにも、電子帳簿保存法を十分に理解した上で適切に対応することが大切です。

 

4. 電子化した請求書の送付方法

電子化した請求書の送付方法には、主に「メール」「チャットツール」「請求書発行システム」の3つがあります。ここでは、各ツールを用いて電子化した請求書を送る場合の送付方法についてそれぞれ解説します。

 

4-1. メールで送付する

電子化した請求書の送付方法の1つとして、作成した請求書のPDFファイルをメールに添付して配信する方法が挙げられます。

電子化した請求書をメールで送付する場合、使い慣れた従来のメールシステムを活用できるため、業務フローの見直しが最小限で済みます。WordやExcelなどで請求書を作成していた事業者の場合は、印刷の代わりにPDF化することで対応できるため、請求書を簡単に電子化できるでしょう。導入コストがかからないこともメリットの1つです。

一方、メールでの送付は手軽ではあるものの、誤送信などのミスが発生するリスクもあります。メールの場合、一度送信してしまったら取り消すことができない点に注意が必要です。また、発行後のデータ管理が煩雑になりやすく、電子帳簿保存法の要件を満たすための運用に手間がかかるケースも珍しくありません。

 

4-2. チャットツールで送付する

取引先とのやり取りでチャットツールを使用している場合、請求書の電子データをチャットツールを用いて送付することも可能です。送信の取り消しやファイルの送受信履歴の確認ができるチャットツールであれば、データの管理を容易に行えます。

ただし、請求書の電子化を機に新たなチャットツールを導入する場合は、取引先と相談し了承を得た上で導入を進める必要があります。チャットツールや契約プランによっては、一定期間を経過すると送受信したファイルが自動的に削除される場合があるため、事前の確認が不可欠です。

 

4-3. 請求書発行システムを使って送付する

電子化した請求書を送付する機能をもつ請求書発行システムを利用すれば、請求書の作成から送付までの一連の作業を一元管理することが可能です。他の方法と比べると導入や運用にコストがかかるものの、作業負担が少なくミスも発生しにくいため、人件費などのコストの削減につながるでしょう。

また、請求書発行システムは電子帳簿保存法に対応しているものが多く、電子化した請求書の保存・管理を適切かつ簡単に行えます。再発行や修正などの作業もスムーズに実施できるでしょう。

 

5. 請求書の電子化・ペーパーレス化を進める方法

請求書の電子化・ペーパーレス化をスムーズに行うには、下記のような流れに沿って施策を進めましょう。ここでは、請求書の電子化・ペーパーレス化を進める方法について、ステップごとに取り組むべき内容を詳しく解説します。

 

5-1. 電子化・ペーパーレス化の目的を明確化する

請求書の電子化・ペーパーレス化に取り組む際には、その目的や意義を明確にしましょう。電子化する目的や意義を明確化しないまま施策を進めると、経営層や社員の理解を十分に得られません。電子化・ペーパーレス化が社内に浸透せず、紙での運用に戻る恐れもあります。

電子化・ペーパーレス化の主な目的として、コスト削減や業務効率化、リモートワークの促進などが挙げられます。請求書に関連する社内の課題を洗い出し、電子化によって何を解決したいかを明確にした上で目的を設定しましょう。

 

5-2. ツール・システムを選定する

電子化・ペーパーレス化の目的が定まったら、利用するツールやシステムを選定しましょう。請求書発行システムを選ぶ際には、次のような観点で情報収集を行い、複数のシステムを比較検討します。

 

【請求書発行システムの選び方】

・自社に適した運用ができる機能があるか

・導入・運用することで実現できることとコストのバランスが取れているか

・導入前・導入後に十分なサポートがあるか

・実績面やセキュリティ面で中長期的に安心して利用できるか

 

また、請求書発行システムの中には、IT導入補助金などの補助金制度を活用できるものもあります。機能やコスト、サポート内容などと併せて確認しておきましょう。

 

5-3. 運用ルールを策定する

電子化した請求書をやり取りするツール・システムを選定したら、次に運用ルールの策定に移りましょう。請求書を電子化することにより、従来の業務フローに大なり小なり変更が生じます。本格的に運用を始める前に、現在の業務フローを見直しながら申請の方法や保存場所、ファイルの共有権限など、現場が混乱しないようルールを策定します。

運用ルールを定める際には、現場の社員の意見を聞くことも大切です。ルールが策定できたら、社内のチャットツールや掲示板など、社員がアクセスしやすい場所で運用ルールを周知し、ルールの浸透を図りましょう。

 

5-4. 関係者に周知する

請求書の電子化・ペーパーレス化を本格的に開始する前に、経理担当社員はもちろん、社内の関係者に周知することが重要です。いつから運用が始まるか、電子化・ペーパーレス化によってどのような点が変わるのかを詳しく説明しましょう。

また、事前に何も伝えず電子化を進めると、取引先を困らせてしまいます。請求書を電子化する際には、取引先に請求書の電子取引ができるようになる旨を前もって伝えましょう。重要度の高い変更のため、取引先が電子受領を希望するかどうかを確認できる書類とともに、書面で案内文書を送ることをおすすめします。

 

5-5. スケジュール・計画を立てて電子化・ペーパーレス化を進める

請求書の電子化・ペーパーレス化に利用するツールやシステムの導入には、申し込みから数か月程度かかる場合があります。想定よりも時間が必要となるケースも多いため、導入・移行のスケジュールにはある程度余裕をもたせましょう。

電子化・ペーパーレス化の計画を立てる際には、「ツールやシステムの選定」「ルールの策定」「周知」「導入・展開」といったステップを含めることをおすすめします。各ステップに目標や期限を設定し、進捗を管理しましょう。

また、請求書の電子化・ペーパーレス化が実際に運用され始めたら、定期的に効果測定を行うことも重要です。必要に応じて運用の見直しを行い、最初に設定した目的を達成できるよう改善を図りましょう。

 

まとめ

請求書の電子化・ペーパーレス化は、経費削減や業務効率化、環境負荷の低減など多くのメリットがあります。しかし、導入には専用システムのコストや業務フローの見直しが必要です。

企業が電子化を成功させるためには、目的の明確化、適切なツール・システムの選定、運用ルールの策定、関係者への周知、そして計画的な実行が不可欠です。当記事で紹介したポイントを押さえ、企業の業務効率化と持続可能な経営の同時実現を目指しましょう。

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監修者情報

横川堅太 – Kenta Yokogawa –

CREST税理士法人 代表社員

監査法人トーマツで監査業務や会計コンサルティング業務やM&A業務に従事し、その後税理士法人で税務業務に従事。

2014年に横川公認会計士事務所を開業し、2016年にCREST税理士法人へ法人成り。代表社員として現在に至る。